わすれもの

日常系オリジナル小説です

第四話 西風ミユ

古城戸ミズキ。

 

姉の友人。

 

凄惨な事故の唯一の生還者。

 

姉の命を奪った交通事故。

 

 

 

(まずったな・・・ 退院の日、なんで聞かなかったんだろう)

 

電話、メッセージ、DM、全て反応がない。

 

古城戸ミズキは無事だろうか。

 

たまたま今日が退院日でよかった。

 

気づくのが遅れていたら、

取り返しがつかないことになっていたとしてもおかしくない。

 

それくらい、彼女はからっぽに見えた。

 

古城戸ミズキの心はまるで、あのバスに置きっぱなしのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

古城戸ミズキのマンションの住所を突き止めるのは簡単だった。

 

突き止める、という言葉は正しくない。

 

彼女のマンションは実家から飛行機で一時間離れたところにある。

 

多忙な彼女の両親が休職を検討していたとき、

古城戸ミズキの面倒をみることを買って出たのが私だった。

 

彼女の両親にメッセージを一通送った。

感謝の言葉とともに私は古城戸ミズキの住所を手に入れた。

 

 

 

 

 

小奇麗なマンションだ。

 

玄関の前に立ち、気づく。

 

鍵を開けられない。

 

再び古城戸ミズキの両親にメッセージを送る。

 

【玄関は呼び出しボタンを押した後、〇〇〇〇(4桁の数字)で開きます

娘の面倒見てくれて本当に感謝しています】

 

すぐさま返信がきた。

セキュリティとしてどうなんだ。

 

エレベーターに乗る。

 

なかなかとろい。

 

スマホを弄っているうちに到着。

 

古城戸ミズキの部屋の前。

 

扉の前に立つ。

 

さすがにちょっと緊張する。

 

インターホンを鳴らす。

 

当然のように反応がない。

 

寝てるのか?

 

・・・寝てるだけならいいが。

 

なんとなく、鍵が開いている気がした。

 

ドアノブに手をかけ、目を閉じる。

 

しっかりと力をかける。

 

 

 

 

そして、

扉はあっさりと開いた。