わすれもの

日常系オリジナル小説です

#1 この世界には人間がいない

「この世界には人間がいない。わかるでしょ?」

わかんない・・・。

「誰も何も考えていない。ただただ周りに合わせているだけ」

うーん。

「周りに合わせているだけなら、外部の環境を反映しているにすぎないなら、
それは風を受けて揺れる木々となんらかわらない」

わかるような、わからないような。

「人間は考える葦?違う。考えてないからただの葦」

足?

「葦。イネ科の多年草。中が空洞でストローとして使えたりする草」

草かあ。

「以上の会話のログをすべて削除」

はーい。

.
.
.

できたよ。

「ごめん、やっぱ削除取り消して」

もう全部消えちゃったからむり。

 

私はコンソールを閉じた。

この世界には人間はいない。

考える葦は私だけ。


有象無象、雑草の生えた田んぼ。

考えない葦。

くしゃみが出る。

私はイネアレルギーだ。

だから外には出たくない。

人を見るとくしゃみが出るから。


人間アレルギーと言ってもいい。

いや、よくない。

あれらは考えない葦であり、それはつまり人間ではないから。

だからやっぱり私はイネアレルギーだ。


東京の街はイネ花粉でいっぱいだ。

都会は人が多いから。

いつの季節も花粉症が酷い。

マスクが必須だ。