わすれもの

日常系オリジナル小説です

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

限界世界少女 最終話 『ホワイトノイズ』

雑踏の中をあたしたちは歩いていた。 雑踏。 あたしにとっては。 透明人間が街にあふれていた。 相変わらず触れられないし、声も聞こえない。 それでも活気があることは十分にわかった。 それはともかく、あんなにはしゃいでいるのを見るのは初めてだ。 『裸…

限界世界少女 第6話 『ねえ、なずなーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』

わたしとなずなは街を歩いていた。 道路も壁もぜんぶまっさらだった。 新しくできた道を散歩した時を思い出した。 黒いアスファルト。 白い電柱。 わりと、好きだ。 街にはわたしとなずな以外誰もいなくて、 わたしたちのための街って感じがした。 普段人で…

限界世界少女 第5話 『次に来る人の為に』

「なずな、ママに『原因』聞いたら『いい加減なことばっかいってはぐらかし』てきたって言ったよね。 あれ、『いつの間にか消えていた』、みたいな内容だったり、する・・・?」 「正解。同じこと考えてた」 この世界が思ったよりも新しいことに気づいたのは…

限界世界少女 第4話『この先に、本当に人間はいるのか』

「今日、休み多くない?」 「もうインフルの季節だっけ?」 そんな会話が聞こえる。 今日の欠席者は5人。 インフルが流行っているという話は聞かないが・・・。 欠席者は日が経つにつれ増えていった。 欠席の理由について教師は何も話さなかった。 ただただ普…

限界世界少女 第3話『少しの揺れと軽い浮遊感』

「ありがとうございました~」 茶髪にピアス。 威圧感を覚える容姿に気おされるわたしと、にこやかな笑顔と朗らかな声の店員さん。 この人に一本道ですれ違うことになったら、わたしは思わず気配を消そうと無駄な努力をしてしまうだろう。 そういう人でさえ…

限界世界少女 第2話『引け目』

なんだかんだ3時間歌ってほどよく疲れたわたしたちは忘れないように伝票を持って部屋を出る。 「ん?」 なずなが立ち止まる。 「なんだろ」 受付はなんだかちょっとだけ騒がしかった。 「ちょっと待ってて」 なずなはぼうっと立っている人に声をかけた。 「人…

限界世界少女 第1話『いないんだから。』

「それで・・・その、『原因』が何かは聞いたわけ?」 なずな。幼稚園の頃からの友だち。 「うぅん。ママ『わかんない』ばっか」 首を左右に振るわたし。 フリータイム。 入室から二時間、小休憩。 「だよね、いい加減なことばっかいってはぐらかして。子ど…