わすれもの

日常系オリジナル小説です

原因について

「近頃、父親にブチ切れる夢を繰り返し見るんだ」

「うん」

「怒りが怒りを呼んで、とどまるところを知らなくて、我を忘れて、

何かを破壊したくて仕方がなくなる、そんな夢」

「うん」

「それはある意味仕方がないと思うんだ」

「どうして?」

「私が<こんな人間>になってしまった原因の大部分は父親にあるから」

「『こんな人間』?」

「わかるでしょ」

「まあまあ」

「私をこんな人間にした父親に、深層心理で怒りを覚えている可能性、それには納得できる」

「うん」

「でも、それも違うんじゃないかなって思えてきたの」

「というと?」

「たしかに原因の一旦は父親にある。正確には父親と母親の関係性?

でも、それは当時の実家の経済状況の問題が原因だし、

そしてそれは当時の社会情勢が原因。

社会情勢は国家間の対立構造による不安が原因だし、

それは資源の不均衡が原因。

資源の不均衡は地球の地殻活動とかいろいろが原因だし、

じゃあ私がこんな人間になったのは地球の活動が原因っていえる?」

「それは・・・お門違いじゃない?」

「そ。世の中には私よりよっぽど劣った人間が山ほどいる。

彼らにもきっと原因がある。家庭環境でねじ曲がった人、貧して鈍した人、急に社会から疎外された人・・・、きっと色々。そしてそれらにはさらに原因があって、そうやってさかのぼっていくときっとばかげたくらい根源的なものになる。きっとすべての原因はビッグバンまでさかのぼれる」

「たしかに」

「だから結局こう考えるのが一番ただしいの。人の人間性が<そう>なってしまった原因は全てその人にある。私がこうなったのは父親のせいじゃない。私が改善の努力をしなかったから」

「うん」

「こう考えることには明確な利点がある」

「『改善の努力』をできる、とか?」

「そう。人間性の原因が私にあるのだから、私が努力すれば私は私の人間性を変えることができる。

親とか家庭とか社会とかビッグバンとか、そんなものに原因を転嫁していたら、人格の問題は何ら解決しないってこと」

「たしかに」

 

-- 

なんとなく思いついたのでメモ代わりに。

いつか書くかもしれない何かしらの小説なりなんなりでこのテーマのやりとりが行われるかも。