わすれもの

日常系オリジナル小説です

限界世界少女 最終話 『ホワイトノイズ』

雑踏の中をあたしたちは歩いていた。

 

雑踏。

 

あたしにとっては。

 

透明人間が街にあふれていた。

 

相変わらず触れられないし、声も聞こえない。

 

それでも活気があることは十分にわかった。

 

それはともかく、あんなにはしゃいでいるのを見るのは初めてだ。

 

『裸になりたい』なんて言ってるが、止めないと本当に脱いじゃいそうな勢いだ。

 

心配になってくる。

 

「で、でも・・・!

これだけ人いないと・・・、何しても恥ずかしくないよね!」

 

そう言ってあいつは階段を駆けあがった。元気だ。

 

「ねえ、なずなーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

流石に苦笑いをしてしまう。

 

急に立ち止まったせいで、後ろを歩いていた人にぶつかられる。

 

 

迷惑そうな顔と目が合う。

 

 

がやがや。人の声。

 

ぶーん。車の音。

 

ぴっぽー。信号の音。

 

ちゅんちゅん。鳥の音。

 

風の音、水の音、空の音、太陽の音、靴の音、人の音、命の音、世界の音。

 

ありとあらゆるノイズが鳴り響く・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段の上にあいつの姿は無かった。