わすれもの

日常系オリジナル小説です

限界世界少女 第6話 『ねえ、なずなーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』

わたしとなずなは街を歩いていた。

 

道路も壁もぜんぶまっさらだった。

 

新しくできた道を散歩した時を思い出した。

 

黒いアスファルト

 

白い電柱。

 

わりと、好きだ。

 

街にはわたしとなずな以外誰もいなくて、

 

わたしたちのための街って感じがした。

 

普段人でごったがえすような場所に誰もいないのは新鮮でなんだかすっごい気持ちよかった。

 

深夜2時にコンビニに行くときの気持ちよさかもしれない。

 

人がいるべき場所に人がいないということほど気持ちいいものはない。

 

「裸になりたくなってきた」

 

「は?」

 

口に出てたとは思わなかった。

わたしの赤い頬となずなの白い目。

紅白だ。めでたい。

 

「で、でも・・・!

これだけ人いないと・・・、何しても恥ずかしくないよね!」

 

誤魔化す。

 

「ねえ、なずなーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

大声で叫んでみる。

 

びっくりしているなずなは新鮮だ。

 

楽しくなってきたかもしれない。

 

もうこの世界には、

 

わたしとなずなしかいないのかも。

 

思えば今までわたしは人目を気にしてばかりいた。

 

人からわたしがどう見えるのかばかり考えていた。

 

ここでこうするのはヘンじゃないか?

 

ここで手を上げたらかしこぶってると思われないか?

 

ここでこれ読んでたら笑われないか?

 

目立たないように。

 

見られたくない。

 

わたしのことを考えられたくない。

 

ただの誰でもない誰か。

 

視界に入ってもわたしで視線が止まらないでほしい。

 

透明人間になりたい。

 

そんな生き方ばかりしていた。

 

誰の視線も気にならないのは初めてだ。

 

今人生で初めて、わたしはわたしという存在を世界にさらけ出している。