わすれもの

日常系オリジナル小説です

第三話 死

一か月と一週間ぶりの我が家。

 

まるで私が帰ってくることを拒むかのように、暗い。

 

(帰ってこなければよかった)

 

(生きて還れなければよかった)

 

「私なんて・・・」

 

玄関に佇む私の口から小さな声が漏れる。

 

誰にも聞かれることなく虚ろに吸い込まれて消えた。

 

靴を脱ぐこともせずうずくまる。

 

膝を抱く。

 

小さく、小さく、丸まって、そのまま黒い点になって消えてしまいたいと願う。

 

 

 

 

 

どれほどそうしていただろうか。

 

十分間程度? それとも一日中?

 

わからない、どうでもよかった。

 

ゆっくりと立ち上がり、靴を脱ぐ。

 

ふらふら歩きの果てにようやく居間に辿り着く。

 

寝そべる。崩れ落ちるといった方が適切か。

 

床の冷たさだけが心地いい。

 

暗い部屋で平らになる私。

 

目を開けたまま何も見ないでいるうちに

 

全身から力が抜けていることに気づく。

 

もう二度とこの四肢が動くことはない、

 

そう思えるほどの脱力感だった。

 

これが、死なのかな。

 

 

 

...

 

 

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ユウも、リンも、こんな感じだったのかな。