わすれもの

日常系オリジナル小説です

限界世界少女 第4話『この先に、本当に人間はいるのか』

「今日、休み多くない?」

「もうインフルの季節だっけ?」

 

そんな会話が聞こえる。

今日の欠席者は5人。

インフルが流行っているという話は聞かないが・・・。

 

欠席者は日が経つにつれ増えていった。

欠席の理由について教師は何も話さなかった。

ただただ普段通り出席確認が行われた。

名前が欠席者のものだった時の沈黙が寒々しかった。

 

やがて欠席者の方が多くなり、

今日にいたっては担任が欠席した。

 

明日から学校が閉鎖されることが通達された。

 

学校だけじゃなかった。

あらゆる教育機関、施設、店舗、サービスは次々と閉まっていった。

 

街から人が消えてゆく。

活気の形骸を見るのは空しかった。

外に出ることが減った。

段々なずなとも会わなくなった。

寒々しいこの世界で、活気はインターネットにのみ見つけることが出来た。

そんな日々がしばらく続いたとき、ふと感じたことがあった。

 

この先に、本当に人間はいるのか?

 

ディスプレイを通じて、わたしは他の人間とコミュニケーションを取っていたつもりだった。

でもそこに本当に人間がいるかどうか、わたしには知るすべなんてないのだ。

仮に機械が人間のふりをして人間そっくりの文章を、会話を行っていたとしても、

わたしはそれに気づけないかもしれない。

むろん、そんなことはないと頭では分かっていた。

いずれそんな機械が出てくるかもしれない。

でも、今じゃない。

今はまだ、機械には人間そっくりの会話はできない。

だからきっと、ディスプレイの先には人間はいるのだろう。

そんなことはわかっていた。

でも。

不安?

寂寞?

ただの文字列ではそれらは到底癒せなかった。

人に、会いたい。

 

気付くと、わたしは電話をかけていた。

 

「・・・もしもし、なずな」